Y S D Yamada Noriaki Structural Design Office
山田憲明構造設計事務所
写真:1~3 福島加津也+冨永祥子建築設計事務所
4~11 小川重雄
高床の家
所在地 茨城県石岡市
建築主 中谷礼仁
建築設計者 福島加津也+中谷礼仁/千年村計画
福島加津也+冨永祥子建築設計事務所
構造設計者 山田憲明構造設計事務所
山田憲明 赤阪健太郎
環境設計者 中川純/東京都市大学
深和佑/早稲田大学
施工者 渡辺建工
木工事 ダイテック
建物規模 延床面積 82.81㎡
階数 地上2階
主要用途 専用住宅
主要構造 W
設計期間 2018年8月~2020年4月
工事期間 2020年9月~2021年3月
掲載 新建築住宅特集2021年6月号
日経アーキテクチュア2021年8月12日号
受賞 2023年日本建築学会作品選奨
大径木材が拡げる住宅構造の可能性
戦後の拡大造林政策によってできた人工林の大径化した立木の有効活用方法が林業界から強く求められており、そのひとつに大径木材の普及がある。壁構造を標準とする現代の木造住宅の柱は105mm角や120mm角が使われるが、大径木材を採用することで曲げ性能の向上と仕口による断面欠損率の低減が図られ、ラーメンや方杖構造への可能性が拡がる。この住宅では、4本の通し柱と井桁状の2階床梁に240mm角のスギ大径木材を用い、同一部材に最大4方向の筋交を取り付けられる接合ディテールを考案し、2.73mもの四方跳ね出しとピロティという難易度の高い構造を同時に実現している。
平鋼が木材に象嵌された接合ディテール
一般的に木造の接合部は木材に切削加工を施す「引き算」の考え方であるため、1カ所に多数の部材が集まる接合部を設計するのは大変難しい。圧縮力の伝達だけならまだしも、大きな引張耐力ももたせる場合はなおさらである。この住宅は、立体的な筋交構造であるがゆえにこの厳しい条件が組み合わさっているが、各木材に平鋼を象嵌した部材同士をボルト接合する方法を考案して問題を解決している。応力伝達は、木材から平鋼へは支圧とビスのせん断によって、平鋼同士は1本のボルトを介したメタルタッチによって効率よくなされ、筋交角度に対するフレキシビリティを有する。このディテールは、平鋼長さの調節によって性能をシームレスにコントロールできる接合方法であるだけでなく、部材全長に渡って平鋼を象嵌することで、木材と鋼材のハイブリッド部材へと変容する拡張性をもつ。